北海道全線を青春18きっぷ1枚で乗ることはできるのか?
目次
いまでは鉄道通だけでなく一般の方々にも浸透してきたフリー乗車券「青春18きっぷ」。
日本全国を走るJRの普通列車が5日分(5回分)乗り放題となるこの切符を上手に活用すれば日本国内を格安で移動することが可能になる。
ここ最近では各地で新幹線の整備が進み、北陸や北日本を中心にJRの在来線の運用がどんどん第三セクターに移ってしまっているので使い勝手はやや悪くなってきているとはいえ、まだまだ人気があるきっぷである。
さて、ここでふとした疑問が。
「北海道を通るJR線全線を青春18きっぷ1枚で完乗することは可能なのか?」
北海道はかつては多くの炭鉱があり、鉄道もかなりの数が張り巡らされたのですが、今では廃線が相次ぎ路線の数も減って寂しくなったもの。
いくら広しと言えども5日あれば全部乗れるのでは?という素人同然の疑問を解消すべく調べてみよう。
北海道のJR線はいくつある?
現在運行している路線は以下のとおり。
- 宗谷本線(稚内~旭川)
- 留萌本線(深川~留萌)
- 札沼線(札幌~新十津川)
- 函館本線(函館~長万部~小樽~旭川)
- 室蘭本線(長万部~苫小牧~岩見沢)
- 千歳線(苫小牧・新千歳空港~札幌)
- 日高本線(苫小牧~様似)
- 根室本線(新得~釧路~根室)
- 釧網本線(釧路~網走)
- 石北本線(網走~旭川)
- 富良野線(旭川~富良野)
- 石勝線(南千歳~夕張・新得)
ちなみにJR以外だと
- 函館市電
- 道南いさりび鉄道(木古内~函館)※第三セクター
- 札幌市営地下鉄
もある。
こうして書き出してみると12路線しかない。
数だけで考えるととてもラクそうに見えるが実際の距離はえげつない。
例えば宗谷本線の旭川~稚内であれば259.4kmもある。これは東京~浜松間(257.1km)とほぼ同じ距離に相当する。
しかも稚内は行き止まりの駅なので、別の路線に乗ろうとしたら来た線路をまた引き返すしかない。
そう考えただけですでに青春18きっぷだけで乗り潰せる気がしないのは明らかだが、一応検証してみよう。
結論から言うと不可能
実際にいろいろなルートや時刻表を見て検討してみたが、5日間で回ることは時間的な制約により不可能であることがわかった。
今回考えたルートを5日目まで書いてみる。
初日
函館0818(大沼公園まわり)⇒長万部1119/1318⇒倶知安1457/1518⇒小樽1626/1640⇒岩見沢1821/1828⇒滝川1907
函館本線をクリアしようと考えたルート。函館方面から大沼駅で2ルートに分かれるのだが、池田園方面は非常に本数が少ないので乗りたい方は函館を一番最初に出発する森行きに乗車すれば乗ることができるが、森駅で2時間近く待つことになる。
2日目
滝川⇒(徒歩)⇒新十津川1000⇒石狩当別1123/1133⇒札幌1215/1228⇒沼ノ端1330/1336⇒岩見沢1450/1538⇒旭川1710/1735⇒天塩川温泉2039
滝川駅から新十津川駅は徒歩連絡が可能。ただし冬の雪道はオススメしないので夏季がねらい目。これで札沼線と宗谷本線途中までクリア。
3日目
天塩川温泉0853⇒稚内1207/1804⇒名寄2149/2205⇒旭川2339
宗谷本線クリアに1日かけた結果。何も言うことはない。
4日目
旭川1537⇒北見1858/1904⇒網走2024
石北本線クリアルート。旭川から普通列車だけで上川より先に行こうとすると、旭川1537発の特別快速きたみしかないので、旭川出発は1537とするしかない。
5日目
網走0641⇒釧路1000/1112⇒根室1322/1333⇒釧路1551/1720⇒帯広2015
釧網本線と根室本線の途中までクリア。
まぁこんな感じで5日間で普通列車だけで北海道全クリなんて無理。
上記のプランで制覇できたのは函館本線、宗谷本線、札沼線、釧網本線、石北本線と根室本線の一部くらいだ。
これ以上は考えるだけ時間の無駄である。
これ以外にも災害によりバス代行になっている日高本線や本数の少ない留萌本線、石勝線、根室本線の新得~滝川間も一部区間が不通になっていて難関だ。
それなら7日間連続でJR北海道とJR東日本の普通列車に乗り放題の「北海道&東日本パス」ならいけるんちゃうか?と思うかもしれないが、結局日高本線や留萌本線が残ってしまった。7日間でも無理なものは無理。
ただでさえ体力を削って普通列車に乗りまくる必要がある青春18きっぷや北海道&東日本パスを、同じような列車と同じような景色が並ぶ北海道の地で消費するのはやめておいたほうがよさそうだとわかる。
北海道を集中して巡るなら「北海道フリーパス」を使うべし
列車のダイヤ的にも時間的にも距離的にも体力的にも、普通列車だけで巡るのはかなり厳しいことがわかったうえで、それでも北海道を鉄道で周遊したい!という場合は「北海道フリーパス」の利用をおススメしたい。
JR北海道の詳細ページ⇒https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Otoku/005934/
これを使えば北海道内を走る普通列車+特急列車の自由席に何度でも乗り降り自由。指定席も6回まで乗車できる。
期間は7日間で価格は26,230円。
一瞬考えて「高い!」と思うかもしれないが、特急列車を端から端まで乗ると片道で5,000円~8,000円ほどかかるので北海道内をくまなく鉄道旅行したいと考えているなら間違いなく元を取ることができる。
繁忙期となる年末年始、お盆、ゴールデンウィーク(大型連休)中は使えないものの、それ以外なら通年で購入可能なので、まとまったお休みが取れた場合や学生旅行のお供に使うとバッチリだろう。
2020年以降、北海道から鉄道がほぼ消滅する
今回なぜ急に北海道の鉄道の話題を取り上げたのかというと、別に気まぐれではなく、今後道内の鉄道事情が大きく動くことが明らかになったからだ。
JR北海道が深刻な経営難に陥っていることはいろいろなニュースで話題になっているので多くの方はご存知だろうと思うが、そんな経営状態では赤字路線の維持などできるはずもない。
なぜ赤字路線ばかりなのかというと理由は単純で、自家用車やバス輸送に勝てずに顧客が減る一方だから。人口密度の低い北海道では鉄道のメリットである大量輸送が活かせず、観光客は価格の安い高速バスや路線バスを利用する。人口の多い札幌近郊や都市間の輸送ではまだ需要があるものの、それ以外の地域では超のつく自動車社会であり、鉄道がなければならない地域は実際のところほぼないのが実情である。
<北海道>JR北海道 札沼線など4線区廃止へ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180617-00000003-htbv-hok
上記の記事にある通り、あと数年で北海道内の鉄道網の大部分は消滅する運命にある。
2020年度で廃止が濃厚な路線は
- 札沼線(北海道医療大学~新十津川)
- 根室本線(富良野~新得)
- 留萌本線(深川~留萌)
- 日高本線(鵡川~様似)
の4路線。(日高本線の該当区間はすでに災害の影響で代行バスの運行になっており復旧のメドもないので仕方ない面もある)
特に留萌本線は留萌~増毛間が2016年12月に廃止になったばかりであり、廃止日にニコニコ動画で生放送が行われるほど話題になったのは記憶に新しい。
記事によると今後5年ごとに各路線の存続を判断していくとのことなので、今後利用者の少ない路線は容赦なく廃止されることが予想される。2030年ごろには札幌近郊以外ほとんどなくなってる可能性も冗談ヌキにありえる。
JR北海道が今後再建を図るにあたって、赤字路線の廃止は喫緊の課題。つまり今のうちに乗っておかないと二度と乗れなくなる路線が今後ドンドン出てくるのだ。
この事実を知った鉄道ファンやモノ好きな旅行者が現地にちょっと押しかけたくらいでは廃線は防げないので、私たちにできるのは今のうちに各路線の乗り納めをして素直に鉄道の消滅を見届けることだけだ。
北海道の鉄道網が消滅する今、まさにリアルタイムに過ごしている我々だからこそできる旅の楽しみ方だと思う。
廃止直前だと今年の三江線のように混み合うことが予想されるので、今のうちに計画を立てて廃線予定の路線をめぐる北海道旅行なんてのも乙なもの。
最後に・・・
北海道の赤字路線が廃止され、鉄道網がメチャクチャ縮小されたら青春18きっぷ1枚で道内制覇が簡単にできる時代がくるかもしれません。
なのでこの記事の表題である「北海道全線を青春18きっぷ1枚で乗ることはできるのか?」という疑問の答えは「2018年現在では無理だけど近い将来可能になる可能性が高い」が正解でしょうね。
ものすごい皮肉なことだけど。
この記事を書いた人
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こんにちは、samaconです。
主に【旅行・鉄道・料理・デジモノレビュー】中心に記事かいてます。
【生年月日】昭和の終わり
【在住地】田舎(千葉)
【これまで】大学卒業後サラリーマンとして電気屋へ就職。そこそこ楽しかったが休みがなさ過ぎて精神的に脂肪していたところで退職してフリー化。
【趣味嗜好】
・鉄道⇒最終的には全線完乗が目標。
・ギター⇒結婚式の余興レベルならなんとか。
・草野球⇒人足りなかったら喜んで行きます。
・デジモノ収集⇒最近はメルカリで断捨離しまくってます。持ってても仕方ないのでね……。
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