せっかくの休日ですから、楽しみませんか?

「もしイノ」のエッセンスと感想

 

前から読もうと思っていたもしイノを読んだのであらすじと感想を。

 

もしイノってなに?

正式なタイトルはもし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだらという本。

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(通称:もしドラ)から5年後くらいの世界が舞台。

野球部員ゼロの浅川学園野球部が「競争のない新しい野球部を作ること」を目指してドラッカーの著書「イノベーションと企業家精神」をもとに甲子園出場を目指す青春小説!

おもな登場人物

岡野 夢

主人公。特になんの目標も野望もない普通の女の子。中学からの友達である真実につられて野球部マネージャーへ。人事担当。

児玉 真実

元陸上選手。運動神経が良くて頭も良くてしゃべるのもうまい。意識高い。実質リーダー。

北条 文乃

新任教諭。もしドラの著者。「え、あ、はい…」が口癖で生徒から「エアーハイ」と呼ばれている。野球部の顧問。

柿谷 洋子

美人で器量がいいので渉外担当。

神田 五月

メガネ。熱い性格なので現場指揮担当。

木内 智明

野球に詳しいので野球戦略担当。

もしイノあらすじ

北条文乃が浅川学園に赴任。もしドラ著者ということもあり休部中だった野球部を復活させることになる。

同じタイミングで夢、真実が入学。すでに同じ志をもっていた先輩の富樫公平とともに野球部再建のためマネージャーとなる。

その後、洋子、五月、智明も加わってマネージャー6名、顧問の文乃というマネージャーしかいない異例の野球部ができあがる。

野球部を「マネジメントを学ぶための組織」とし、事業を「人材の確保」とした。さらに3つの課題をあげ「グラウンド整備(環境)」「監督選び」「選手獲得」とした。

人材を確保するための方法としてまずグラウンドを整備することにした。そこでメジャーリーグのボールパークように花を植えて見栄えをよくすることにした。

これまでにない「グラウンドに花を植える事業」をするため園芸に詳しい生徒・松葉楓を説得し、いろいろあったが最終的に野球部に入部してもらうことに成功。

その後部員も増え、高校野球では類を見ない「グラウンド整備専属チーム」が誕生。グラウンド整備だけを黙々と行ってついに完成させる。

その後、監督には文乃と共に『もしドラ』で甲子園に出場した経験を持つ二階正義を招聘する。

新しく入った部員には「型」を使ったスピード指導法をすることを決める。優秀な型をつくり、その型にはめて指導することで優秀な人材を短期間で大量に育成できると考えた。

しかしまだ部員がいないのでまずは野球強豪校を招待し整備したグラウンドで試合をしてもらうことに。

強豪校や地域住民から好評を得ることに成功。浅川学園の野球部が復活したこともウワサになる。

翌年、想像以上の入部希望者が現れたため「最適な人数に絞るための」入部テストをすることになる。テスト内容は「野球選手のモノマネ」。

3年生の公平が卒業し、新しいリーダーに真実が選ばれる。

真実と夢はマネージャーや選手と面談に取り組む。そこで夢は真実が部員に対して強い口調で怒ったりするようになることに気づく。

いろいろあったが徹底的にモノマネ練習に取り組んだり、絶対的エースを置かない先発ローテーション方式を組んだ結果、夏の大会でベスト8まで進出。

ベスト8の戦いで当日の投手である「一条隼人」が(精神的なことが原因の)腹痛で投げられないと言い出す。

真実がブチギレる。隼人にクビを言い渡すが夢になだめられると今度は真実がマネージャーを辞めると言ってどこかにいってしまう。

一同唖然。結局試合にはボロ負けし、その後真実と隼人は部活に参加しなくなる。

真実がいなくなってどうしようと思う夢だったが、いなくなった後も特に支障なく部活がまわっていることに気づく。

文乃は真実と面談して「真実は一度決めた信念を曲げることができない性格」であること「自分(真実)はもともとマネージャーに向いていないと気付いていた」ということを聞かされる

夢は真実が野球部での居場所を失っていたことに初めて気づく。(真実中心に物事がまわっていたので居場所はあたりまえにあると思い込んでいた)

新しくマネージャー陣のリーダーに指名された夢はもう一度部員たちと面談をして真実と隼人を復帰させる方法を考えることになる。

監督の正義との面談で「魔法の説得術」の話を聞かされる。

その後戦略担当の智明から最新ピッチングマシンを導入して打者の練習ではなく投手の変化球の研究をすることを提案される。(これまでにない変化球の研究)

その後強豪校の練習を見学する機会を得る。そこで強豪校の監督が「試合で負けたことで選手に罰として走らせたら『監督にも負けた責任があるんだから一緒に罰を受けて走るべきだ』と指摘されて以来、一緒に走って選手の意識を高めている」という話を聞き、真実と隼人を説得する方法を思いつく。

真実と会い、隼人の専属トレーナーとして投手の走り込みを徹底的にやってほしいと説得し真実と隼人を復帰させることに成功する。(真実の居場所を作り、隼人の意識を高めるイノベーションとなった)

智明と正義が高速無回転ボールを開発し、投げ方の型を作ることに成功。投手全員にそれを習得させる。

地方大会で高速無回転ボールを使って無双する。決勝ではロースコアで引き分けになるが、浅川学園は型とモノマネを駆使して量産した高速無回転ボール使いが続々と現れる一方で、相手は絶対的エースしかおらず連投で疲れているところをメッタ打ちしてついに優勝する。

全く新しい練習法と独自に編み出した変化球、そしてそれを型にはめて習得させるというこれまでの高校野球ではありえなかった指導法で球界にイノベーションを起こした!

もしイノで出てきた重要なポイント

マネジメントは居場所を作るためのテクニック

これはどちらかというと「もしドラ」寄りの内容になるのだが、マネジメントは誰もが活躍する場所を創造するためのものだ。

競争によって一部の勝者のみが利益を確保しそれ以外の大多数が損害を被ることは不健全な社会をつくることになる。

そこでマネージャーは人それぞれに役割を与え、居場所を作ることこそ究極の目標となる。

これはyoutube講演家として活動している元マクドナルドの凄腕マネージャー鴨頭嘉人氏も発言していたことだが、今の20代~30代の若い世代はモノやカネが飽和している時代を生きてきたので、自分の存在を評価されることに最も重きを置く傾向にあるのだという。

つまり会社にいて上司や役員(つまりマネージャーの立場)から適切なコミュニケーションを受けて「居心地がいい」と感じれば退職したり仕事に対するモチベーションが下がったりすることはなくなるのだ。

マネジメントとは人材を見極めて最適な居場所を創造し、責任のある仕事を適切に任せるということ。管理職の方は肝に銘じておいたほうがいい。

 

イノベーションが起きる7つの機会

イノベーションが起きる機会として

  1. 予期せぬことの生起
  2. ギャップの存在
  3. ニーズの存在
  4. 産業構造の変化
  5. 人口構造の変化
  6. 認識の変化
  7. 新しい知識の出現

があり、信頼性と確実性の大きいものから並んでいる。

 

わかりやすい例をあげるなら「自動運転技術」。

「自動車は人間が運転するもの」という認識が世界共通。

その一方で日本はすでに超高齢化社会が到来している。

高齢者による運転操作ミスが連日のように報道され、多数の犠牲者が出ている。

これは予期せぬことの生起と言えるだろう。

なぜならMT車からAT車が普及し発進操作が簡略化され、エンストもしにくくなりとても便利になった。

しかしそれゆえに認知機能が衰えた高齢者による操作ミスが多発するようになった。これは予期せぬことだろう。

過疎地域では人口減により鉄道や公共交通機関がどんどんなくなり、本当は自家用車の運転を控えたけど車を使わないと買い物も満足にできないというギャップが存在し、そこに高齢者が安全に外出できる車のニーズも存在する。

そしてGPSの高精度化やAIの発達にかかわる企業が増え産業構造の変化も顕著になってきており、少子高齢化という人口構造の変化でバスやタクシーの運転手も減少し自動運転への期待は高まるばかり……

 

とまぁこんな風に自動運転技術によるイノベーションはもはや約束されたものと言える。

この他にもキャッシュレス決済、VRなどじわじわとイノベーションが起きているものは身の回りにたくさんある。

 

勧誘と説得の違い

勧誘と説得は明確な違いがある。

勧誘の場合は本文中にも出てきた「トムソーヤのペンキ塗り」が有効な手法として取り上げられている。

 

これは罰として嫌々ペンキ塗りの作業をさせられていたトムソーヤが友達に代わりを頼んでも誰もやってくれないのだが、逆にペンキ塗りをいかにも楽しそうに始めるとだんだん友達が寄ってきて自分にもやらせて欲しいと頼んでくるようになる。

しかしそこでトムソーヤは代わるのを断るのだ。すると今度は友達が食べものをあげるから代わってくれと頼みこんでくるようになる。そこで代わってやるとイヤだったペンキ塗りからも解放され、さらに食べものまで得ることができてしまうのだ!

 

このトムソーヤのペンキ塗りのポイントは「とにかく楽しそうに仕事をする」「それをすることを禁止する」という2点にある。

 

人間の心理として何か楽しそうなことをしていると自分もそれをしてみたくなる。そして禁止されるとますますそれをしてみたくなるという心理を応用した勧誘テクニックである。本文中では野球部の選手の勧誘や文乃が正義に監督を依頼する際に応用していた。

 

一方の説得は相手に何かをしてもらう時に「相手にとって得になることを説明すること」が重要になってくる。

それに加えて本文中では「魔法の説得術」という言葉が出てきた。

これは簡単に言えば「この役割は●●で▲▲だからアナタにしかできないことなの!」という具合に「アナタにしか頼めないんだ!」というニュアンスを強調することをいう。

 

たとえば

「この資料、明日までのまとめといてくんない?頼んだよ!」

と言われるよりも

「この資料を明日までにまとめられるスキルを持っているのは●●さんしかいないんだ!お願いしちゃっていいかな?」

と言われたほうが自分を戦力として評価してくれているんだという思いが伝わりやすくなるだろう。

 

本文中でも夢が真実と隼人を野球部に復帰させる説得をするのにこの方法を使った。

「野球部のこととマネジメントのことを深く理解していて、なおかつ足が速い人材なんて真実しかいないの!これは真実にしか頼めない役目なの!」という具合に。

感想

結果として浅川学園の野球部は数多くのイノベーションを起こすことにし成功した。

物語終盤の展開(特に新しい変化球の開発や習得の場面)はちょっとファンタジーというか現実離れしたところもあったかなと思いつつ全体としてはサクセスストーリーとしてよくまとまったなと感じた。

 

そしてタイトルにもある「企業家精神」とは一体なんだったのかというと、個人的には「変化をしっかりと捕らえられる柔軟性」と「真摯に取り組むこと」にあると思う。

たとえば浅川学園が野球部を復活させるにあたって「まずは優秀な選手の獲得だ!」と中学野球の研究を始めたり「グラウンドも業者に頼んで作り直すぞ!」と言ってテコ入れしたりしたら、きっとそこらへんにある「ちょっと野球のうまい学校」で終わっていたに違いない。

はじめから「競争をしないで勝つ」「高校野球に創造的破壊をもたらす」という考えのもと行動した結果、成功を収めることができたのだ。

 

飲食の世界でも「いいステーキはゆっくり座って味わうもの」という常識を「いきなりステーキ」は見事に破壊したし、「スマホは高いもの」という思い込みをMVNOや格安SIMは徐々に取り払うことに成功している。

いずれの例も「狭くても立ち食いでもいいから上質のステーキを手軽に味わいたいな……」という消費者ニーズの変化や「スマホは高いからガラケーのまま」というユーザーが「ガラケーよりも安くするためにMVNOのスマホにしたいな……」という認識の変化にむすびつけたイノベーションの例だ。

これを「上質なステーキを立ち食いしたい人なんていないよ」とか「ガラケーのひとはどうせガラケーのままだよ」という考えでいたらイノベーションは発生しない。なぜならそこには変化をとらえる柔軟性も真摯さも存在しないからだ。

 

イノベーションとは常識・慣例を破壊し、ニーズやギャップを的確に分析し、時代の変化に敏感であれば意識せずとも自然と創造されるものであろう。

それをうまくまとめてカタチにできるかどうかはあなたがどう真摯に取り組むかにかかっているよ、ということが本書の伝えたいメッセージに違いない。

この記事を書いた人

samacon
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こんにちは、samaconです。
主に【旅行・鉄道・料理・デジモノレビュー】中心に記事かいてます。
【生年月日】昭和の終わり
【在住地】田舎(千葉)
【これまで】大学卒業後サラリーマンとして電気屋へ就職。そこそこ楽しかったが休みがなさ過ぎて精神的に脂肪していたところで退職してフリー化。
【趣味嗜好】
・鉄道⇒最終的には全線完乗が目標。
・ギター⇒結婚式の余興レベルならなんとか。
・草野球⇒人足りなかったら喜んで行きます。
・デジモノ収集⇒最近はメルカリで断捨離しまくってます。持ってても仕方ないのでね……。
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