半分の月がのぼる空 1/ 橋本紡
レーベル: 文春文庫
著者: 橋本紡
イラスト: 山本ケイジ
肝炎で入院中の高校生・戎崎裕一はエロ本集めが趣味の多田さんや元ヤンキーの看護師・亜希子さんに翻弄される日々のなか、同い年の秋庭里香に出会う。人形のように美しく本を愛する文学少女、そして女王様のようにワガママである彼女は、難しい病気をかかえていた。全国の中高生を熱狂させた青春小説の決定版。解説・飯田一史
この作品には以下の成分が多く含まれております。
- ノンフィクションのようなフィクション
- 銀河鉄道の夜
- 建前の無い素直な人間性=人間くさいトゲのある性格
- ボーイ・ミーツ・ガール
- 三重県伊勢市周辺
本の読み終わる目安:2時間
12年ぶりに読みました。1巻(文春文庫)は電撃文庫の1巻と2巻の内容が収録されております。
本の厚みは2冊分が1冊に纏まった訳ですから半分になっているのですが1ページに書かれている文の量が増えているので中身は変わらない。
この本は2010年に発売されたハードカバー版をベースにされている。電撃文庫版を読んだことのある人なら読むとすぐ違和感に気がつくだろう。標準語から伊勢弁に変わっている。また細かい加筆ある為少し印象が変わってくる。
内容が同じでも文章、台詞などが全く違うので改めて読むと新鮮だ。
すこし例を出してみよう。
雨の中、里香が投げた本を屋上の庇から拾うシーンの一部。覚えているだろうか。
(読んだことない方はゴメンナサイ)
<電撃文庫版>
「はあ?」
「裕一!?大丈夫」
司が頭上から叫んでくる。
「裕一!?どうしたの!?」
「はあ?」
雨に打たれながら、僕は立ちつくした。
<文春文庫版>
「なんや? これ?」
壁面に突き出した庇の上で、僕は呆けた声を出した。
「どういうことや?」
「裕一! 大丈夫? おい! どうしたん?」
司が頭上から叫んでくるけれど、答えることもできず、僕はただ立ちつくした。
これだけ見ると良く分からないと思いますが(内容にあまり触れないところを選びました)同じシーンです。
内容は同じですが細かい所まで手を加えられていることもあり、かなり楽しめます。
一度は読んだ話ですが大分昔なので思い出しながら新しい小説を読んでいる感じがなんとも心地が良い。
読んでいると思い出す、過去のこと。有無を言わさず振り替えさせられるし、記憶を刺激させられる。
気がつけば感情移入し始める。
そして、他人の死を目の前にした時、大切なものを失った時に思い出す普段の時間がどれだけ大事なのか。
日常がどれだけおしい時間だったのか、思い出させてくれるそんな作品だ。
人が人と付き合っていくときに無意識にでも意識的でも他人のことを思いやる、気を使うだろう。
むやみに人を傷つけないように必死だ。しかし登場人物達は刺々しい。
それは人間の生の感情がリアルに出ているからなんだと思う。上辺だけではない、普段隠している本音が素直に出ている。
笑顔で接客してくれる販売員も嫌なことがあればタバコをすいながら愚痴も言うだろう。
ワガママなヒロイン、口が悪いナース、ちょっとエッチな爺さん、裕一につらく当たる医者。
どのキャラクターも魅力的に見える。
読んだことある人も読んだことない人も是非読んで見て欲しい。
電撃文庫版がアニメ化しているのでのせておきます。
重ねて言いますが文春文庫版は伊勢弁なので違います。
アニメ版はかなり省略されているので興味が湧いたら絶対読むべきです。
お試しあれ。
この記事を書いた人
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どうも、kiatuデス。
元『日本一の家電量販店』で責任者のようなことをしていた。
接客→営業→事務と職を転々としている1人のおっさん。
今は過去やったことの無いことに日々挑戦中。
【自己紹介】
生年月日:1984年8月15日
住まい:埼玉県
職歴:家電量販店員・大手通信キャリア法人営業・大手通信キャリア事務・大手製造メーカー購買事務
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